Ceylon Tea

セイロンティーの旅

スリランカが世界に誇るセイロンティー。かつてセイロンと呼ばれたこの島で生産される紅茶の総称です。セイロンティーといってもその種類や味は様々。標高など生産地の違いから、茶葉の大きさ、生産の過程によっても色、味、香りが異なります。その年の天候によっても味が左右されるなど、まるでワインのように個性豊か。フレーバーやブレンディングによってもその個性は広がります。

紅茶の生産、そして消費から派生した紅茶を取り巻く文化も見逃せません。英国の植民地時代、19世紀に紅茶生産のためにインドからセイロン島へ渡ったインドタミルたちの色彩豊かなヒンズー寺院。紅茶をコロンボの港へと運ぶために建設された高原鉄道。砂糖と粉ミルクをたっぷりと使ったキリテーのほか、紅茶とともに軽食を味わう優雅なアフタヌーンティーやハイティー。

セイロンティーの世界をスリランカで紐解いてみませんか。セイロンティーの旅、スリランカ紅茶の旅。緑豊かな茶畑への旅。 

紅茶のこぼれ話

“If you are cold, tea will warm you; if you are too heated, it will cool you; if you are depressed, it will cheer you; if you are excited, it will calm you.” – William Ewart Glad Stone

19世紀のイギリスの政治家ウィリアム・ユワート・グラッドストンはこんな言葉を残しています。

「あなたが凍えそうな時、紅茶があなたを温めてくれるでしょう。あなたが熱くなっている時、紅茶があなたを冷ましてくれるでしょう。あなたが落ち込んでいる時、紅茶があなたを励ましてくれるでしょう。あなたが興奮している時、紅茶があなたを落ち着かせてくれるでしょう。」

セイロンティーの産地

スリランカの紅茶は、内陸部の丘陵地帯と南部を中心に生産されています。王朝が築かれたキャンディーをのぞき、植物が生い茂り、簡単には訪問できなかったこの丘陵地帯は、シンハラ語でマヤラタ<幻覚の地>とかつては呼ばれ、悪魔や精霊たちに心を奪われる場所と考えられてきました。

しかしながら、1815年キャンディー王朝が滅びると、英国の植民者たちはこの未開拓のエリアを開拓していきます。1840年には200以上のコーヒー農園が築かれますが、さび病の影響により衰退。その後、セイロンティーの父とも呼ばれるスコットランド出身のジェームズ・テイラーをはじめとし、たくさんの英国人によって紅茶の生産が導入され、今では世界中で愛される紅茶の産地となりました。

スリランカの紅茶産業を管理する政府機関スリランカ政府紅茶局では、スリランカで生産される紅茶を標高の高さによって、その品質を3段階に分類しています。

– ハイグロウン(標高1300m以上で生産)
– ミディアムグロウン(標高670-1300mで生産)
– ローグロウン(標高0-670mで生産)

茶葉の大きさによっても等級が分類され、茶葉の大きさ(グレード)に合わせて大きいものから次のように分類されます。さらに細かいグレードに分けられることも。そのほか、茶葉を丸めたCTCや手もみによるハンドメイドティーといった製法も導入されています。

– OP(オレンジペコ)
– FOP(フラワリーオレンジペコ)
– BOP(ブロークンオレンジペコ)
– DUST(ダスト)

また、左の図のようにセイロンティーの生産地を気候の異なる7つのエリアに分けて、ワインのようにそのブランド化を計っています。

紅茶の7大産地

ヌワラエリヤ(地図赤部分)
山々に囲まれたハイグロウンティーの生産エリヤ。標高が高いため気温が涼しく、ブーケのような透き通った色と香りの紅茶が生産されるエリアです。紅茶のシャンパンとも呼ばれています。OPやBOPで有名。

ウヴァ(地図青部分)
世界3大紅茶の一つに名前があげられます。南西、北東両方のモンスーンの影響を受け、他にはない特徴的な味わい。メンソールのさっぱりとした爽やかな風味が個性的です。

キャンディー(地図桃色部分)
標高1300m以下で生産されるミディアムグロウンのエリアになります。しぶみのあるフルボディーのどっしりとした味わい。紅茶らしい味を楽しみたい方におすすめです。

サバラガムワ(地図紫部分)
シンハラージャ森林保護区とアダムスピーク野生保護区の間に位置するローグロウンティーのエリアになります。ルフナとよく似ており、大きな茶葉とウィスキーのような赤色がかった色が特徴的。キャラメルのような甘みも個性的。

ディンブラ(地図赤紫部分)
標高1100〜1600のエリアになりますが、ほとんどの紅茶が1,250m以上で生産されるためハイグロウンティーに分類されます。ジャスミンと糸杉のほのかな香りが漂います。黄金色でふんわりとした味わい。

ルフナ(地図オレンジ部分)
標高600m以下で生産されるローグロウンティー。シンハラージャ森林保護区以南から南にかけて生産されます。長い大きめの茶葉が特徴で、烏龍茶のような味わい。紅茶の王様とも呼ばれる芯芽を用いたシルバーティップも有名です。

ウダプッセラワ(地図黄色部分)
ヌワラエリヤのすぐ近く、標高2000m級の山々が連なるエリア。ヌワラエリヤとよく比較されますが、色合いは濃く、ピリッとした強い味わい。バラのような香りも特徴的です。

スリランカで楽しめるセイロンティー文化

お茶摘み体験
ケニアなどでは機械でのカッティングが一般的ですが、セイロンティーは100%が手摘みで収穫されています。英国の植民地時代茶摘み労働者としてセイロン島へと渡ってきたインドタミルたち。彼らの子孫が今でも茶摘みとして日々茶畑へと仕事に出かけます。カゴを背負って一芯三葉をひたすら積む作業。そんなに簡単ではありません。是非実際にご体験ください。

アフタヌーンティー/ハイティー
キャンディー、ヌワラエリヤ、コロンボ、ゴールなどかつて英国人植民者たちが暮らした街には、アフタヌーンティー/ハイティーを提供するホテルがたくさんあります。三段トレーのクラシカルなタイプが一般的で、どこも15時からサーブされる場合がほとんどです。ボリュームも多いので遅めの昼食や、早めの夕食におすすめです。

紅茶工場見学
スリランカ旅行中やっぱり訪れたいのが紅茶工場。摘まれた茶葉がどのように私たちが日々味わう紅茶になるのか、その過程を見学することができます。一般開放されている観光茶園は事前予約不要で訪問できますが、工場によっては事前に連絡が必要な場合もありますので特定の紅茶工場を訪問希望の場合には事前にご連絡を。

紅茶博物館(キャンディー近郊)
スリランカ政府紅茶局運営の紅茶博物館。キャンディー郊外に位置しています。英国の植民地時代に用いられた製茶の機械などが展示されている他、セイロンティーの父ジェームズテイラーの遺品なども。紅茶工場を改装したユニークな博物館です。

ペラデニヤ植物園(キャンディー近郊)
キャンディー郊外に位置する60ヘクタールにも及ぶスリランカ最大の植物園。椰子の木やランの花、熱帯の植物を鑑賞できることで有名ですが、この植物園内に、スリランカで最初の植えられた茶木がいまだに元気に育っています。ガイドさんなどは知らない場合も多いので、是非植物園の清掃員などに伺ってみてください。

リプトンズシート(バンダーラウェラ、ハプタレー近郊)
スリランカ産紅茶の発展に貢献したのが今でも紅茶界をリードする黄色いパッケージのあのリプトン社を築いたトーマス・リプトンです。19世紀後半からスリランカに4つの茶畑を持っていました。そのいくつかは湖に沈むなど残されていませんが、ダンバテン茶園は観光農園として一般開放されています。リプトンが好んで座った茶畑を見渡すリプトンシートで有名です。

ノリタケアウトレット(マータレー)
キャンディーから車で1時間ほど北上したスパイスで有名な街マータレーには、日本の有名食器会社ノリタケの最初の海外工場があります。この工場で生産されたアウトレット商品を工場近くのお店で購入することができます。日本で購入すると結構なお値段のする高級食器をリーズナブルに購入することができます。カップ&ソーサーも品揃え豊富で、紅茶好きにおすすめです。

ティーテイスティングとブレンディング体験(コロンボ)
コロンボ近郊の紅茶店では、紅茶、スパイスやアーユルヴェーダハーブなどのテースティングが楽しめる他、自分のオリジナルブレンドを作るワークショップが行われています。作ったブレンドは購入することも。旅のお土産に自分のオリジナルブレンドをお持ち帰りできます。フレーバーティーとブレンドティーの違いって?そんな基本も学べるプログラムです。

ヤーラテー/キリテー
スリランカの人々の多くが、粉ミルクと砂糖を大量に加えたキリテー(キリはミルク、テーは紅茶の意味)を1日4回毎日賞味されています。1m近く高いところからコンデンスミルクと一緒に紅茶を泡が立つように混ぜ合わせる手法は、ヤード(1ヤードは約90cm)を意味したシンハラ語をとってヤーラテーとも呼ばれています。琥珀色の美しい紅茶だけではなく、現地の味も是非ご賞味ください。

その他、コロンボの紅茶局直営店でのお買い物、人気紅茶ブランド「ディルマ」や「ムレスナ」のお店訪問、スパイスガーデン見学、オーガニック茶園訪問、シナモン農園見学、キャンディーの老舗お菓子屋さん訪問、ブロカー訪問、紅茶パッキング工場見学など、ご希望に合わせて様々な手配が可能です。お気軽にご相談ください。

紅茶生産とティープラッカーの文化について学ぶ
ザ・ラインハウス

http://apcas.jpn.org/linehouse/

英国の植民地時代にインドのタミルナドゥーから茶摘みのための労働者として渡ってきたインドタミルたち。彼らが暮らした住宅建築は小さな部屋が線のように連なることからラインハウス(長屋)と呼ばれています。このラインハウスを観光資源、コミュニティーツーリズムの拠点として用いようと、その再建プロジェクトが日本のNGO「アプカス」の支援によって行われています。ゲストハウスとして宿泊ができる他、ラインハウスを拠点としてプラッカータミル/インドタミルの文化を学ぶ様々なプログラムが行われています。セイロンティーが私たちの手元に届くまで、様々なプロセスがありますが、その中でも最も過酷な労働を担い、紅茶生産を陰から支えるプラッカーたち。彼らの生活を知らずして紅茶通とは言えません!

セイロンティーを楽しめるホテル&リゾート

マドゥルケレーティー&エコロッジ
www.madulkelle.com
キャンディー郊外の紅茶畑に位置するリゾート。ラグジュアリーテントを用いたユニークな18のロッジが紅茶畑の中に連なります。キャンディー地区の紅茶の生産をしており、近隣には紅茶工場なども。茶畑を抜けるサイクリングもおすすめです。

ヘリタンスティーファクトリー
www.heritancehotels.com/teafactory
かつて実際に稼働していた紅茶工場を改装したユニークなホテルです。敷地内にはミニ紅茶工場があり、お茶摘みと製茶体験なども楽しめます。英国植民時代の鉄道車両を用いたレストランも人気です。ティーテイスターによるティーテイスティングセッションなども楽しめます。

グランドホテル
grandhotel.tangerinehotels.com
英国風の街並みが残り”リトルイングランド”とも呼ばれるヌワラエリヤの街を代表する格式あるホテル。19世紀英国総督のマンションでもありました。趣あるレストランやバーも魅力です。英国人茶園主の文化や生活を感じられるリゾートです。

セイロンティートレイルズ
www.resplendentceylon.com/teatrails
ハットン近郊のキャッスルリー池近郊の紅茶畑に位置する5つのバンガローからなるリゾート。英国の植民地時代に茶園主たちが利用したバンガローを改装した趣のあるインテリア。茶園主になった気分でセイロンティーを楽しめる特別なリゾートです。

98エーカー
www.resort98acres.com
トレッキングなどに大人気の美しい丘陵地帯の続くエッラに位置するブティックホテル、紅茶畑に囲まれた丘上に建つコテージタイプの開放感のあるリゾートです。全25部屋のみのサービスの行き渡るリゾートです。鉄道での訪問や、有名なナインアーチブリッジも歩いて訪れることができます。

ゴールフェイスホテル
www.gallefacehotel.com
1864年にオープン。海のシルクロードの中心地、アジアの植民地の歴史を物語る格式高いホテルです。エリザベス女王や昭和天皇をはじめとした要人がかつて宿泊したホテルでもあり、ホテル内には小さな博物館も。今も昔もセイロンティーの貿易の拠点となるコロンボ。そんなコロンボで紅茶好きの方におすすめしたいホテルです。

ジェットウィング・ワーウィック・ガーデンズ
http://www.jetwinghotels.com/jetwingwarwickgardens/#gref
紅茶畑の中に建つ、レンガ造りの可愛らしいホテル。元々は茶園主の洋館で、よく手入れさえた骨董品や高級な家具があちこちに置かれています。紅茶に詳しいスタッフが庭で開くティーテイスティングプログラムは大人気です。

コザセイロン
http://cozaceylon.com/
番外編。スリランカ人のご主人と日本人の奥様が運営されるマウントラヴィニアのブティックホテル。奥様は東京のセイロンティーの紅茶専門店にかつて勤務されており、そこでご主人に出会ったとのこと。紅茶を通した素敵な出会い!その後、吉祥寺にスリランカレストラン「キリパ二」をオープン。惜しまれつつ閉店されましたが、バックグラウンドからもわかる通り、お料理とホスピタリティー共に◎のホテルです。お料理教室やおかし作りのレッスンも。ワガママが叶う6部屋のみのアットホームなホテルです。

ミーナ・アンマの紅茶体験
https://www.jetwinghotels.com/meena-ammas-tea-experience/
ヌワラエリヤ中心地から車で約45分。「リトル・ニュージーランド」と呼ばれるアンベウェラ地区にある「ジェットウィング・ワーウィック・ガーデン」の敷地内で体験できる、セイロンティーや紅茶畑で働く人々(ティーピッカー)の仕事や生活を学べるプログラムです。
かつて「ティーピッカー」だったアンマ・ミーナと共に、茶畑を散策したり、一杯のお茶を作るための骨が折れる大変な作業について学んだり、本格的なスリランカ料理を学ぶことができます。
敷地内にはティーピッカーの人々が暮らしていたバンガローを改装した宿泊施設もありますので、ご希望であれば泊まりでじっくりと学ぶことも可能です。
地元の食材を使い丁寧に作られた食事や、アフタヌーンティーを楽しむこともできますよ。